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なぜ石けんが肌や毛髪の洗浄に最適なのか

石けんの弱点?

一般的に、以下の3点が石けんの弱点とされています。

  1. 塩基性(水溶液が弱アルカリ性)になってしまう
  2. 硬水中で利用できない
  3. 強い酸性下で利用できない

そして合成洗剤は石けんの弱点を補うと言われていますが、実際にはどうでしょうか。

石けんは自然の恵み

石けんは、大昔、獣を焼いてしたたり落ちた脂に木の灰が混ざって偶然できた物質ですが、 油脂をアルカリで煮る製法は今も変わりません。

獣の脂(弱酸)と木灰(強塩基)の中和反応で弱塩基の石けんが生まれました。

自然のなせる業のすごさです。

塩基とは

塩基」には主にタンパク質を溶かすなどの特徴があり、代表的なものには水酸化ナトリウム、アンモニアなどがあります。 「塩基」の中で水に溶けるものを「アルカリ」といい、その水溶液が示す性質を「アルカリ性」といいます。

何がすごいのか、詳しく見ていきましょう。

石けんの「弱点」は、自然の絶妙な塩梅によるもの

自然の絶妙な塩梅(としか言いようがない)によって、石けんは、

加水分解して、水溶液は弱アルカリ性という特徴を持つことになりました。

そのため、石けんには、ミネラルに弱い、酸に弱い、うすまると洗う力を失う、という他の界面活性剤にはない特性があります。

石けんの主成分は脂肪酸ナトリウム(粉、固形)または脂肪酸カリウム(液体)ですが、水中ではイオン化傾向の高いナトリウムイオンやカリウムイオンが分離して脂肪酸イオンとして存在します。

脂肪酸イオンは親水基と疎水基(親油基)を持ち界面活性剤として機能します。

ところが、水道水の中に含まれるミネラル(金属イオン)の中でイオン化傾向の低いカルシウムイオンやマグネシウムイオンが脂肪酸に結びついて脂肪酸カルシウムや脂肪酸マグネシウムという金属石けん(石けんカス)になり洗浄力を失います。

金属石けんは水に溶けにくく、洗浄力がないため、洗濯や掃除では厄介者ですが、工業用としては重要で、古くから潤滑剤などフラスチックから医薬品、化粧品など様々な分野で活用されています。

化粧品では、パウダーファンデーションやおしろい(白粉)などの感触を向上させたり、乳化安定化などのために必要不可欠な材料となっているのです。

また、弱アルカリ性の石けんは、汚れに含まれる酸性物質で中和され、残った石けん成分は水で加水分解されて洗浄力を失います。

石けんは強い洗浄力と脱脂力を持っていますが、弱アルカリ性であるため、本来の洗浄力と脱脂力が妨げられ、洗い過ぎることがなく、また、皮膚に残留、浸透することがありません。

浴用などの化粧石けんでは「弱点」が利点に……

しかし、化粧石けんにおいては、この弱点がかえって利点ともなっている。
皮膚は弱い酸性物質で覆われているので、石けんの脱脂力は適当に緩和され、遊離した脂肪酸が皮膚の保護に役立つのである。
強い脱脂洗浄力を特色とする合成洗剤が広く普及している今日も、皮膚を対象とする洗浄には石けんがなお優位を保っている理由の一つである。

石けんは汚れを取る作業が終わると、直ちに石けんカスになって皮膚常在菌や河川に棲む微生物のエサになります。

石けんは、発酵食品などと同様、人間の日々の営みの中から生まれた産物であって、生態系に組み込まれ、人や環境にほとんど負荷をかけない界面活性剤なのです。

まるで馬鹿の一つ覚え……石けんはアルカリ性だから

石鹸シャンプーのデメリットは、アルカリ性であることが挙げられます。
髪の毛は、アルカリ性に傾くとキューティクルが開いて、髪の毛が軋んでダメージを受けやすい状態に。

上記のように、「石けんはアルカリ性である」からシャンプーには不適切だ、と主張する人たちがいますが、無知なのか意図的なのか、いずれにせよ程度が低すぎます。

日本では pHが6~8を中性、8~11未満が弱アルカリ性、11以上がアルカリ性、14に相対的に近い場合を強アルカリ性、3~6が弱酸性、3以下が酸性として、 2.0未満、0に近い酸性を強酸性といいます。

pHによって液性は大きく変化しますが、塩酸や硫酸などの強酸性や、水酸化ナトリウムなどの強アルカリ性の水溶液は火傷など人体に強い影響を与えます。

髪や肌を洗う石けんは、「アルカリ性」ではなく、「弱アルカリ性」です。

純石けん(pH9.5~10.5)の刺激性は温和

石けん成分98%以上の、添加物を一切含まない石けんを「純石けん」といいます。

石けんは、低pHにおいては「浸透による脂肪溶解」がおこりやすく、高pHにおいては「浸透による角質層障害」がおこりやすいといわれ、pH9.5~10.5の間でのみ、事実上どちらの作用もおこらないとされています。
これは「水溶液下の切採皮膚に対する、ラウリン酸ナトリウム粉石けんのpHと浸透の関係」という実験データで、出典は、I.H.Blank,E.Gould,J.Invest.Dermatol.,37,485(1961)、その引用が、幸書房「新版脂肪酸化学」128Pにあります。
「純石けん」といわれるものは、すべてこのpH9.5~10.5のpH域に該当しますが、純石けんでないものは、ここから外れるものがほとんどです。

酸・アルカリ・pH

洗剤を使う場合、pHについて理解する必要があります。

酸性やアルカリ性というのは、水溶液の性質の名前です。

食酢や果汁のように、すっぱい味のするものは酸性、 草木を燃やしたあとにできる灰を水に溶かした灰汁(あく)のように、苦い味のするものはアルカリ性です

酸性・アルカリ性には、弱いとか強いとかいう度合いがあります。

この酸・アルカリの度合いを表すのに、pH(ピーエッチ)と呼ばれる数値を使います。昔は「ペーハー」(ドイツ語読み)という読み方が一般的でした。

下の図に、その段階と、いくつかの物質のpHを挙げておきます。

pH表

pHが1変わると、酸やアルカリの液性が約10倍変化します。

例えばpH10の石けん(弱アルカリ性)とpH12の灰汁(アルカリ性)では、灰汁のアルカリ性が石けんより100倍強い、ということです。

健康な肌はアルカリ中和能が働く

健康な肌は皮膚常在菌がバランスを保ちながら体の各部位でさまざまな役割を果たし、外部からの刺激や菌の繁殖を抑えるため、pH4.5~6.0の弱酸性を保っています。

だから、肌と同じ弱酸性で洗うのが良い、ということにはなりません。

なぜなら、排気ガスやほこり、皮膚の汚れ(汗、あか、ふけなど)酸化した皮脂やメイクなどは「マイルドな」洗浄剤では洗浄力が劣り、長い間使っていると皮膚に汚れが残ってしまうことがあるからです。

界面活性作剤を使わないで汚れを落とすことができればそれに越したことはないのですが、皮脂やメイクなどの油分を落とすためには界面活性剤が必要です。

髪や肌の健康にとっては、界面活性剤の刺激を防ぐことも大切ですが、汚れを落とすことの方が何倍も大切なことです。

とはいえ、肌の上に界面活性剤が残さないことは非常に大切なことですから、汚れを取った後すぐに洗浄力を失う石けんが最も肌に負担をかけないのです。

石けんで顔を洗ったり、シャンプーしたりすると、 一時的に肌がつっぱったり、髪がきしんだような感じになることがありますが、これは肌や髪がアルカリ性に傾いたためです。

健康な肌にはアルカリ性に傾いた場合、皮脂や汗で中和する皮膚常在菌の働きで、元の弱酸性に戻す力があります。

これをアルカリ中和能と言い、健康な肌がもっている回復力です。

アルカリ中和能が働く、ということは、皮膚代謝を活性化することになり、肌にとってはとても良いことです。

弱アルカリ性のお湯は、「美肌の湯」「美人の湯」と言われる温泉が多く、肌への刺激が少なく、肌が弱い人や敏感肌の人でも安心して入浴することができます。

アルカリが肌に良くない」のなら、八方温泉(長野県北安曇郡白馬村pH11.2)などアルカリ性が比較的強い温泉には怖くて入れませんね。

温泉に入ると、肌がしっとりとしたり、肌の表面がすべすべになります。

それは温泉成分やアルカリ中和能の働きで、皮膚代謝が活発になっているからです

八方温泉の「ホテルひふみ」のホームページには以下のような案内文が書かれています。

まるで羊水に包まれたかのように心からゆったりとしていただけます。

羊水は弱アルカリ性

そうです、羊水は弱アルカリ性です
おなかの赤ちゃんを守り、育てる羊水は、八方温泉ほどではありませんが、pH7.0~8.5の弱アルカリ性です。胎児の時には弱アルカリ性の中で皮脂膜(胎脂)を整えて育んでいるのです。

本題から外れますが、羊水と海水の成分がほとんど同じで、生命が海で生まれたと考える重要な裏付けとされています。

海水も温暖化の影響で大気中の二酸化炭素濃度増加により海水の酸性度は上昇しつつあり海の生物への影響が心配されています。

ちなみに現在の海水はpH8.1程度の状態にあるそうです。

日本では石けんカスは問題にはならない

石けんカスが問題になるのはヨーロッパなどの硬水地域であって、日本の水道水は世界でも稀に見る軟水ですから、日本のほとんどの地域で石けんカスは問題になりません。

石けんの泡立ちがよい水を、軟らかい水または軟水といい、反対に泡立ちの悪い水を硬い水または硬水といっている。水の硬度とは、この硬さの程度、いいかえると石けんの使いやすさの程度を数値をもって示したものである。

日本の水はほとんど軟水ですから、硬水軟化処理を行う必要がなく、浄水処理は水を清澄にする除濁、除色に重点がおかれています。

世界保健機関(WHO)の基準では、硬度120未満を軟水、120以上を硬水とよんでいますが、日本の水道水の硬度は40前後ヨーロッパの硬度は200~400です。

軟水でできる微量の石けんカスは、洗った後のキュとするさっぱりした洗い上がり感を演出します。

なお、ごく一部に軟水は軟水機を通した水と勘違いしている人がいますが、軟水機を通した水は機能水で、自然界の軟水とは全く違い、軟水の一般家庭に軟水機は不要です。

軟水機が不要な理由

軟水機は、イオン交換樹脂を用いてカルシウムイオンとマグネシウムイオンをナトリウムイオンとイオン交換することで、硬水を軟水に(硬度300の水を硬度100程度に)します。
日本のほとんどの家庭の水道水は硬度40前後ですから、軟水機を通せば、硬度は確実に0になります。

すなわち、人体に有用なカルシウムイオンやマグネシウムイオンはゼロになって、多すぎると人体には好ましくないナトリウムイオンが増える、ということです。

軟水機は給水中のカルシウムイオンなどを除去する必要のあるボイラーには必要ですが、軟水の国である日本の一般家庭には不要です。

合成洗剤で肌を洗うと、薄まっても洗浄力が持続し、石けんカスができないから、石けんのようにスキッとせず、いつまでもヌルヌルしています。

すすぎを繰り返してもなかなかぬるぬる感がとれないのは、合成洗剤の界面活性力が体表面への親和性を発揮するためです。

石けんの肌の表面に残るわずかな石けんカスは、常在菌の働き(常在菌のエサになる)などによって皮膚が酸性に傾き、数時間で分解されます。

髪に残留した石けんカスは、石けんシャンプーの後、クエン酸、酢、レモンなどの酸性の溶液で簡単に除去することができます。
加水分解して弱アルカリ性を示す石けんの特性は、肌や毛髪の洗浄には弱点ではなく長所なのです。

石けんを掃除や洗濯に使う場合は、炭酸塩やケイ酸塩などのアルカリ助剤の配合によって、「石けんの弱点」はカバーされます。

無機物である炭酸塩やケイ酸塩は、環境にほとんど負荷をかけません。

では、「石けんの弱点を補う」合成洗剤とはどんなものか、詳しくみていきましょう。

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